
経営コンサルタントとして顧客企業をよい状態に導こうと思へば、顧客社長の右腕になろうとしてはいけない。このことは、おそらく10年以上の経験・実績のある経営コンサルタントなら理由はわかっていると思う。決して社長の右腕にはなろうとしないで、適度な距離を保つことがとても大事だからである。デビューしたての頃は仕事を安定させるために、お客様(経営者)から右腕のように扱われることを無意識のうちに目指そうとしてしまうこともあるが、絶対にお薦めしない。理由は3つある。
1つ目の理由は、社長が経営コンサルタントを自分の右腕のように思い始めると、社長が自分で物事を考えたり悩んだりすることが確実に減るからである。悩む前にコンサルタントに聞いてみよう、何かあればコンサルタントが注意してくれるだろう、という気持ちになり、経営者として当然すべき試行錯誤の質も量も減り、緊張感も下がってしまうからだ。過度の依存心は業績面にマイナスの影響しかない。
2つ目の理由は、社長の周囲の社員たちがだんだんとやる気をなくすからである。社長が頻繁にコンサルタントに連絡を取り合っているのを社員たちはどのように見るだろうか。特に幹部社員は「うちの社長はコンサルタントの言いなりになってるんじゃないか」「社長は最前線で頑張っている私たちよりも、コンサルタントを信頼しているみたいだ」と感じるはずである。職場はだんだんとシラケてくる。自分たちが業績を盛り上げていくんだと前向きに取り組んできた社員ほど脱力感は大きい。そして「現場」の社員のやる気が下がったら例外なく業績は下がる。
そして3つ目の理由は、コンサルタント自身もよい仕事ができなくなってくることだ。何か勘違いしてしまいまるで自分が社長の代行になったような態度をとったり、社員たちの上司にでもなったような口調で話したり、仕事の指示をしたりする人もいる。また何かやらないと報酬が得られないという焦りから、社員が担当している仕事を自分が代わりにやろうとする場合もある。どちらにしても経営コンサルタントとしての価値を下げる行動である。社員たちからすれば「来て欲しくない人」になってしまう。そして3カ月もすれば社長もその様子に気が付いて、だんだん態度が冷めていき、ある日「あとは自力で頑張るので、もう来なくてよいです」と通告されることになる。
では、社長から右腕のように扱われたらどうすればいいのか? 「社長、ご信頼頂いて感謝しています。ただ、私じゃなくて、社内で右腕になってくれる人を早く育てていく必要がありますね」と伝えるのがよいと思う。そして「そんな社員はうちにいれば苦労しませんよ」といった反応が返ってきたら「すぐに頼りになる人なんてどの会社にもいませんよ。だから候補者を選抜して育成していきましょう。半年もあれば頭角を現す方は出てくるものです。私に経営幹部育成教育をお任せ頂けませんか?」と半年間のプログラムを提案すればよいと思う。皆さんはどう思われますか? (2025年3月14日)