韓国の清州と日本の東京との二拠点生活を始めて3年が経ちました。
日本の飲食業と韓国の飲食業の違いは何かと聞かれると、いくつも挙げることができますが、顧客満足度に大きく影響するものとして、「厨房が見えるか否か」が挙げられます。これまでは気にしていなかったため気づかなかったのですが、韓国の人気店ではほぼ例外なく“客席から厨房が見え”ます。そしてどんなアジュンマ(おばさん)が料理しているのか、厨房は清潔か、などはほぼ丸見えです。学生バイトらしい青年が座り込んで大根の皮を剝いているところも見えます。当然ながら厨房から客席の込み具合などの様子も見えます。ソウルのような大都市では一部例外はあるでしょうが、おそらく人気店ではほぼ例外はないと思います。お客様は別に意識して厨房を見るわけではありませんが、お店に入って席に座ったら、無意識に目が厨房のほうに向いて、厨房の様子は視野に入ります。
一方で日本の飲食店はどうでしょうか。以前、私の東京の自宅(江東区)の近くにあった回転寿司屋(大手チェーン)は、以前はU字型のカウンターテーブルの真ん中に厨房のようなものがあって、そこで働く人たち(東南アジア系の若い青年が多かった)が魚に包丁を入れる様子やシャリを握る様子が見えていました。また目が合って挨拶したりもしていました。しかしある日改装工事があって、その日以来仕切りのようなものが出来、厨房の様子は全く見えなくなりました。当然、どんな人が何人くらいでこの寿司を作っているのかは全く見えなくなりました。単なる偶然かも知れませんがそれから1年でこの店は閉店してしまいました。
日本で厨房が見える、料理する人の顔が見えるのは、一流の寿司屋や鉄板焼きです。目の前で職人が握ってくれたり、調理してくれたりする様子を見ることができます。そしてラーメン屋も厨房が見えるお店が多いかと思います。料理人がバンダナを頭に撒いて、一杯ずつ作ってくれるのが少しでも見えると安心感を感じます。しかしその他のレストランはほとんど厨房が見えません。ファミリーレストランも客席からキッチンが見えません。サイゼリヤのようにキッチンでは料理はしておらずセントラルキッチンから配送されたものを電子レンジで温めるだけ、のようなレストランではキッチンを見せたくないのはわかる気もしますが。厨房を見えないようにしているのは見せなくない事情がある、と思います。
「厨房が見えること」と「業績」には相関関係がある、と思うのは私の主観に過ぎません。皆さんはどう思いますか?機会があれば実際に店舗を回りながら調査をしてみたいと思っています。そして他の国ではやっていることで、日本でもできない理由はなく、そして顧客満足に繋がる施策なのにまだほとんどやっていないとすれば、日本の飲食業にはまだまだ伸びしろがあるということです。