数年前からビーチクリーン活動というものが盛んになってきたように思います。いろいろなメディアでボランティアを募っておられるものを目にする機会が増えました。私も海で遊ぶことは大好きですし、海岸が綺麗であることはとても大切なことだと思っています。ところがビーチクリーン活動でボランティアをされている団体のホームページや、実際に実施されている方と話していると、幾度となく首をかしげたくなるような話が登場するのです。一つはプラスチックを「ゴミ」と認識していること、もう1つは「SDGsに貢献している」と謡っていることです。

確かにビーチのプラスチックゴミを拾えばビーチは綺麗になるでしょう。ボランティアで海岸をキレイにする活動はそれは素晴らしいことだと思います。しかしそれを持続可能性に貢献とか、SDGsゴール17のために、などと言ってよいのでしょうか。

例えばボランティア団体が集めたプラスチックゴミはその後どうなるのかがハッキリしていません。とある海岸美化財団のホームページを見ると「財団が後日回収します」と記載されているだけで、そのプラスチックをどう処理するのか記載はありません。また海岸にプラスチックゴミが溢れる原因は、ビーチクリーンボランティアを募集しているある海岸美化財団のホームページによると、「海岸のゴミはうち70%は川から流れてきたもの」とあります。海岸のゴミを拾うのではなく、川から流れてくるものを止めなければ解決しないということであり、話が矛盾するのです。

また、集めたプラスチックを「ゴミ」と認識していることにも疑問を感じます。プラスチックそのものは生活に役立つもので幅広く活用され、生活に浸透しているものです。問題は使わなくなったプラスチックが海に流れ出て、海洋環境を破壊しているです。ということは、プラスチックを集めて再利用する仕組みを早くつくることが大事であり、プラスチックは「ゴミ」ではなく、貴重な「資源」という認識を持つことが大事だと思うのです。子供たちにも海岸のプラスチックを集めて終わりではなく、プラスチックを長く使う、使わなくなったものは集めて再利用してもらう、ということを教えていくべきなのではないかと思うのです。

アメリカに本社のある「インターフェイス」はカーペットタイルの製造で10年くらい前に世界シェアNo.1になりました。日本ではまだ知名度が低いようですが、なぜ世界シェアNo.1になったのでしょうか。従来のカーペットタイルはバージンプラスチック繊維で作られていますが、この会社は海に不法投棄された漁網を引き揚げて、洗浄し加工し直してカーペットタイルを製造しています。不法投棄された漁網を引き揚げるのは赤道直下の貧しい漁村の方たちで、高額で原材料として買い取るのです。この会社の製品は他社と比べると5割程度価格が高いのですが、それでも世界シェアNo.1になった理由はカーペットのデザインが素晴らしいだけではなく、この原材料の仕入れから製造への仕組みが魅力的だからでしょう。漁村の方たちは漁網を引き揚げれば引き上げるほど経済的に潤い、子供たちが学校へ行けるようになり、病院に行けるようになるのです。これからもずっと続けていくことができます。そして海はどんどん綺麗になっていくのです。「ゴミ」などというものは世の中に存在しておらず、すべて「資源」にはずです。

もちろん「SDGsなんてコストがかかるばかりだから、関わると業績が悪化する」という昭和のパラダイムからいまだに抜け出せていない方たちや、「SDGs活動をしている」と謡えば顧客が集まるとか親会社へのメンツが立つと考えて無理やりSDGsゴールを紐づけて宣伝している企業経営者よりはずっとマシだと思います。しかし先ほどのボランティアのように、目の前の海岸のプラスチックを拾ったら海洋汚染をストップできると子供たちに教えるべきではないと思います。むしろそれでは何も解決しないのだということを教えるべきです。そして私たちが必要以上にプラスチックを使うことが廃棄に繋がるのだから、必要ない場面では使わない、ムダなプラスチックを使っている企業の製品は買わない、リサイクルされているものを使うということが海洋をキレイにすることに繋がるのだ、と教えるべきだと思います。