とある大手スーパーの食品コーナー。たくさん入っているように見せかける梱包の商品が並ぶ。


 先般ある会合で、メキシコ赴任から帰国したばかりの女性管理者の方とお話する機会があった。その方が自己紹介もそこそこに「日本のスーパーって上げ底商品ばかりで驚いているところです」とおっしゃったので、私も思わず「やっぱりそう感じますか!」と反応してしまった。私自身もこの4年は海外滞在の日数のほうが多いが、帰国したら東京自宅の目の前にある大手スーパーで買い物をする。そのたびに上げ底商品が多過ぎてうんざりしていたからである。セブンのお弁当の上げ底はネット上でも話題になっていたが、大手スーパーの食品売り場も上げ底商品だらけだ。メーカーからの仕入れ商品でもケースや包装紙は大きくて中身がスカスカなものが多い。日本に住んでいるとそれが日常になって、もう怒る気にもならないのかもしれないが、海外生活を体験したことのある人は日本のスーパーの上げ底商品は非常に不愉快に感じるはずだ。ここで買い物したくないと思っても、仕入れ商品はどこのスーパーに行っても同じことだ。
 
 日本のスナック菓子も上げ底と同じ発想で、ほぼ例外なく内容量に対して袋が異常に大きい。中には空気がパンパンに入っていて、振るとカラカラと音がする。その他に、ご丁寧に一つひとつ個別包装になっているマトリョーシカ方式のものもある。商品が割れないようにという配慮?かもしれないが、外見の包装に比べて内容物はほんの僅かしかない。隣に並べてある輸入スナックと比べてみれば違いは一目瞭然だ。そして自宅のゴミ箱はそういった過剰な包装ゴミであっという間に一杯になる。

 『人は見た目が9割』というタイトルの本があったが、商品も消費者は見た目で購入意欲が高まることは間違いではないだろう。中身をよく知っているものは別として、それ以外は包装されている外見で判断するしかないからである。そして購入して自宅で子供たちがその袋を開けてみて「たったこれだけしか入ってないの?」とビックリ、ガッカリすることが想像がつく。そんな商売をいつまで続けるつもりだろうか。30年くらい前に後進国で見かけた商売のようだ。後進国と言われていた国々も今は成長し、豊かになった。そして昔のような見た目で消費者を欺く商売は、淘汰されていったのか最近はもう見かけなくなった。今もそんなビジネスが通用しているのは日本のスーパーと、ハワイのお土産店のマカダミアナッツチョコレートくらいではないだろうか。

 日本のGDPが30年間でほとんど伸びていないのは政治家の堕落だけでなく、企業が消費者を欺くような商売の仕方をしてきたことも大きな要因だと思う。利益を最大化するための手法かもしれないが、顧客満足という軸を忘れた商売は長くは続かない。過剰包装をしないというポリシーでやっているスーパーがあれば、少なくとも騙されたようなイヤな気分にはならないし、過剰なゴミがでることもない。そんなスーパーがあるなら私なら何の迷いもなくそちらを選ぶ。同じような考えの人は少なくないと思う。
 これから起業する人たちは、購入後にガッカリさせるような商売ではなく、選ばれ続ける商売を拡大して欲しいと思う。    (2025年3月10日)